「 iDeCo はやめた方がいい」こんな意見を聞いたことはないでしょうか?
税制優遇の制度として普及したiDeCoですが、節税メリットがある一方で注意点やデメリットもあるため、確かに正直iDeCoをおすすめできない人もいると思います。
今回はiDeCoの制度を簡単に振り返りつつ、iDeCoをおすすめできる人、おすすめできない人をそれぞれご紹介します。
iDeCoのデメリットと注意点
iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)は、個人の老後の資産形成を目的とした私的年金制度です。
大きなメリットとして積立時・運用時・受取時の税金が非課税になるメリットがある一方で、通常の積立投資やNISAと比較するといくつかのデメリットや注意点が存在します。
まだiDeCoに加入していない人や、加入しているけど継続するか迷っている人は以下をチェックしてみてください。
①原則60歳まで引き出しができない
最大のデメリットがこちらです。
iDeCoは原則60歳まで引き出しや解約ができません。例外はあるものの該当するケースが極めて限定的なので、途中解約や資産の引き出しは「できない」と考えておいた方がよいです。
また、50代からiDeCoを開始した人は「60歳から引き出し可能」とは限りませんので注意してください。
60歳到達月時点の通算加入期間 | 受給可能になる年齢 |
---|---|
10年以上 | 60歳 |
8年~10年 | 61歳 |
6年~8年 | 62歳 |
4年~6年 | 63歳 |
2年~4年 | 64歳 |
1ヶ月~2年 | 65歳 |
一方で60歳まで「引き出しができないからこそ貯められる」という人がいるのも事実でしょう。
この点はライフプランにも影響する部分です。
老後資金よりも、住宅資金や教育資金から貯めていきたいと考えている人にとっては、最も注意すべき点でしょう。
②掛金に上限がある
iDeCo は税制優遇制度ですので、無制限にメリットを享受できるわけでなく「掛金の上限」があります。
サラリーマンや公務員(第2号被保険者)の場合、毎月の掛金上限は2万円程度です。
加入資格 | 掛け金上限 |
---|---|
自営業者、学生等(第1号被保険者) | 月額68,000円 |
企業年金なしの会社員(第2号被保険者) | 月額23,000円 |
企業型DCのみ加入している会社員(第2号被保険者) | 月額20,000円 |
企業型DCと確定給付型に加入している会社員(第2号被保険者) | 月額12,000円 |
確定給付型のみ加入している会社員(第2号被保険者) | 月額12,000円 |
公務員(第2号被保険者) | 月額12,000円 |
専業主婦(夫)等(第3号被保険者) | 月額20,000円 |
では、月2万円だけで老後資金が貯まるかというと厳しいと言わざるを得ません。
これが「iDeCoをやらなくていい理由」には直結しませんが、加入資格によってはメリットを享受しづらいことは確かです。
また、手続きが若干面倒なわりには積立できる額が少ないこともiDeCoがなかなか普及しない一因かと思います。
③投資商品に縛りがある
iDeCoは積立ができる商品に限りがあります。
以下は主要なネット証券3社で取り扱う銘柄数です。
主要ネット証券におけるiDeCoで積立設定可能な銘柄数(2022年12月時点)
証券会社 | 投資信託銘柄(全銘柄) | iDeCoで積立可能な銘柄数 |
---|---|---|
楽天証券 | 2,635銘柄 | 32銘柄 |
SBI証券 | 2,658銘柄 | 84銘柄 |
マネックス証券 | 1,279銘柄 | 27銘柄 |
銘柄を自由に選びたい人からするとデメリットに聞こえるかもしれませんが、
逆に投資初心者からすると「すでにiDeCo銘柄は厳選されているため迷う必要がない」という見方もできます。
たとえば、楽天証券でiDeCoを始めた場合に積立設定できる銘柄は以下です。
・楽天・全米株式インデックス・ファンド
・楽天・全世界株式インデックス・ファンド
・たわらノーロード日経225
・たわらノーロード先進国株式
・セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド
投資信託に詳しい方であれば、聞いたことのある銘柄もあるでしょう。
銘柄数が少ないとはいえ、代表的な銘柄はカバーできているのでそこまで神経質になる必要はないかもしれません。
④手数料がやや高い
iDeCoで運用する際に月々発生する手数料は、①収納手数料、②事務手数料、③口座管理料です。
手数料の種類 | 金額 |
---|---|
加入時手数料 | 2,890円 |
収納手数料 | 105円/月 |
事務委託手数料 | 66円/月 |
口座管理料 | 0~500円/月 |
受取時手数料 | 440円 |
口座管理料は金融機関ごとに異なるためチェックしておきましょう(その他の手数料はどの金融機関でも同じ)
ちなみにインデックスファンドの信託報酬は0.1~0.5%くらいが目安。
iDeCoの場合、たとえば、月2万円の掛金として、口座管理料が0円と仮定すると、毎月の手数料率は0.855%です。(毎月手数料171円÷掛金20,000円=0.855%)
こう考えるiDeCoの手数料は若干割高になります。
ただし、投資信託の信託報酬とは異なり、掛金に応じて手数料額が変わるわけでないため、掛金が多いほど「手数料率」は当然下がります。
低コストで運用したい人にとっては、若干の懸念ポイントかもしれません。
iDeCoを活用するメリットは?
すでに制度を理解している方はご存知かと思いますが、iDeCoのメリットについてもおさらいしましょう。
①運用時・受取時に非課税になる
iDeCoの節税メリットとして、運用時と受取時に非課税となります。
通常、株式や投資信託などは、発生した利益に対して20.315%の税金がかかります。
一方で、iDeCoの場合は「運用時に発生した利益」に対して税金はかかりません。
つまり発生した利益は丸々受け取ることができるのです。
また、受取時には退職所得控除や公的年金等控除が適用され、一定額までは非課税にすることが可能です。
②掛金全額が所得控除になり、所得税・住民税が安くなる
また、iDeCoは毎月積み立てた金額を所得控除することで、所得税や住民税を安くすることができます。
これはNISAにはない制度になりますので、iDeCo独自のメリットと言えるでしょう。
また、年収や掛金が高くなるほど所得控除のメリットは大きくなります。
③自営業者の場合、掛金上限が高い
自営業者(第1号被保険者)の場合には毎月6.8万円までiDeCoで積立が可能です。
投資信託への積立の場合、同じく運用益が非課税となる現行NISAでは月3.3万円(年間40万円まで)ですので、NISAよりも積立額が大きいという利点があります。
自営業者は企業年金などに加入できないため、自営業者の場合はその分メリットを享受しやすいということですね。
iDeCoをおすすめできる人・できない人
では、ここからは「iDeCoをおすすめできる人」「iDeCoをおすすめできない人」をそれぞれご紹介します。
① 老後資金を今から貯めたい人(≒短期で引き出す予定がない人)
② 月に5万円以上投資に回せる人
③ 自営業者(第1号被保険者
おすすめ① 老後資金を今から貯めたい人
iDeCoの最大のデメリットは「60歳まで引き出しできない」点ですが、
老後資金を積極的に貯めていく予定で、短期的に引き出す予定がない人にとっては、iDeCoはぜひ活用したい制度です。
なぜなら、掛金の所得控除による節税メリットがあるからです。
「60歳まで引き出せなくても問題ない!」という人にとっては是非おすすめです。
おすすめ② 月に5万円以上投資に回せる人
NISAは(iDeCoと同様に)運用益が非課税となり、かつ途中解約も可能な制度です。
毎月投資できる金額が少ない人は、iDeCoよりもNISAの投資枠を優先して埋めた方がよいと思います。
一方で、一定の金額以上を投資できる人にとっては、iDeCoとNISAを併用して積立することをおすすめします。
理由は、所得控除による節税メリットを確実に享受できるからです。
あくまで「5万円」というのは一つの目安になりますが、
仮に積立できる金額が5万円以下であれば、NISAのみ、あるいはNISA+特定口座で良いと考えています。
一方で、それ以上に投資が可能な方は、NISAや特定口座で中長期の資金を確保(住宅資金や教育資金など)をしつつ、iDeCoで老後資金を蓄えるのがよいと思います。
いくら住宅資金にお金が必要とはいえ、まったく老後の蓄えをしないのも心配かと思います。
仮に5万円を毎月投資に当てられる方は、つみたてNISAに33,333円、残りをiDeCoに投資するような配分は一案です。
年収500万なら月1.6万の積立でも年4万円弱の節税に!
おすすめ③ 自営業者
最後に自営業者の方で、毎月余剰資金で投資ができる場合にはiDeCoはおすすめします。
最大6.8万円/月の積立も可能で、所得控除による節税メリットも大いに発揮してくれるでしょう。
では、ここからはiDeCoをおすすめできない人(注意が必要な人)について解説します。
① 専業主婦(夫)など収入がない人
② 月に5万円以上投資に回せない人
③ 住宅資金や教育資金などから貯めたい人
要注意① 専業主婦(夫)など収入がない人
単純に所得控除による節税メリットを享受できないからです。
無理にiDeCoに投資する必要はありません。
NISAに満額投資してそれでもなお資金が余るようであれば、iDeCoの活用も一案かもしれません。
また、年収が少ない場合にも(年収が高い人と比べて)節税メリットが少なくなることは事実です。
節税効果はシミュレーションが可能ですので、以下の記事もチェックしてみてください。
要注意② 月に5万円以上投資に回せない人
あくまで「月5万円」というのは目安になります。
それほど多くの金額を投資に回せない場合には、iDeCo活用の優先度は低めでよいと思います。
毎月積立投資ができている方は、支出の管理もできる方かと思いますが、
やはり「60歳まで引き出しできない」という点がネックになります。
病気や事故など、何かあった時のために「いざという時に引き出せる資金」は貯めておいた方がよいでしょう。
基本的にはNISAを優先でよろしいかと思います。
要注意③ 住宅/教育資金から貯めたい人
最後に資産運用の目的(資金の使途)が明確に決まっている人です。
「住宅資金を○年後までにXXXX万円貯める!」と決めている場合には、それに向かって一直線で進んでください。
この場合、途中解約ができないiDeCoは選択肢から外れるはずです。
まとめ
今回はiDeCoの制度を振り返り、おすすめできる人・できない人について解説しました。
iDeCoの最大のメリットである「掛金全額の所得控除」がある一方、最大のデメリットは「60歳まで解約不可」な点です。
iDeCo活用を検討するうえでの「主な観点」は以下の3つかと思います。
- 収入の多さ(≒節税メリットはあるか?)
- 毎月投資可能な金額
- 資産運用の目的、資金の使途
また、今回紹介した「iDeCoをおすすめできない人」といっても全くメリットがないわけではありません。
あくまで投資は自己判断。
また、正解はありませんのでご自身の判断で決断されることをおすすめします。
では、素敵な投資ライフをお楽しみください。